神社を知る 第六回 「本殿の前の五色の幡にはどんな意味があるのですか?」
神社に参拝(さんぱい)すると、 ほとんどの御本殿(ごほんでん)の前に左右それぞれに、青・赤・黄・白・紫の五色の長い幡(はた)と、向って右には鏡と玉、左には同じく剣を吊り下げた、真榊(まさかき)と呼ばれるものが立てられています。これらは神道の理念を象徴するもので、日本の神話時代にまで遡る古い歴史をもっています。
この五色の幡は、陰陽五行(おんようごぎょう)の思想に基くもので、この幡を懸けると「願い事が叶う」とされ、伊勢の神宮(じんぐう)の『皇太神宮儀式帳(こうたいじんぐうぎしきちょう)』にも、遷宮(せんぐう)の最初の神事、御用材(ごようざい)を伐(か)りだすにあたっての山口祭(やまぐちさい)で用いることが記され、また『延喜式(えんぎしき)』にも各種の祭にその料(りょう)として規定されています。
この幡は、「五行の順調な循環、すなわち、揺るぎない大地と順調な四季の移ろいの中で、自然の一部として生かされている自分を自覚し、無理のない生き方をすることが幸せの原点」であることを示し、同時に、それは現在注目されているされているエコロジーの考え方の基盤をなすものです。また、共に吊るされている、鏡は正直(しょうじき)、剣は慈悲(じひ)、玉は智恵(ちえ)、あるいは、鏡は徳(とく)、剣は正義(せいぎ)、玉は生命力(せいめいりょく)の象徴ともいわれ、天地自然、万物の運行の法則を表す五色の幡とあわせて、私たちが歩むべき「神の道」、すなわち人生のありようを教示しているのです。
私たちは、自然の営みにならい、芽生えの春、生育の夏、みのりの秋、休息の冬、若者は若者らしく勉強に励み、壮年は壮年らしくしっかり働き、熟年は熟年らしく豊かなみのりを楽しみ、晩節を迎えたら次の世代の芽吹きの手助けをする、各々その年齢や立場に合った「らしき生き方」を心がけることが大切なのです。
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