神社を知る 第七回 「なぜ本殿の前で鈴を振って拝むのですか?」
鈴は、古代中国では「仙道(せんどう)に琉金(りゅうきん)の鈴有りて以て鬼神を摂(おさ)む」(陶弘景『真誥』)とされ、その清らかな音色によって邪霊が祓(はら)われると信じられていました。
これがわが国に伝わり、公式令(くしきりょう)という法律では、中央政府と地方諸国を結ぶ交通・情報伝達の手段として設けられた駅伝(えきでん)の馬にも駅鈴(えきれい)を用いることが定められていました。
その他、魔除の意味を込めて腕輪や足むすび、鷹狩の鷹の尾などにも用いられましたが、単なる娯楽に用いられることはほとんどありませんでした。
平安時代後期の学者大江匡房(おおえのまさふさ)の撰になる『江家次第(こうけしだい)』という書物に、十二月に行われる内侍所(ないしどころ)の御神楽(みかぐら)で、天皇の拝礼の時に女官が鈴を三度鳴らすという神事の次第が書かれています。このような作法が国民の間にも一般化して今に受け継がれているのです。
神社の拝殿(はいでん)に吊された金色の鈴を三度振ってお参りするのは、鈴はその清淨(せいじょう)な音色に祓いの霊力を持ち、金色(黄色)は陰陽五行の思想では中央土性(ちゅうおうどせい)で最も強い力を発揮し、三度振るのは、三という数が万物の生成と繁栄を約束するめでた数とされているからなのです。
神社での祈祷(きとう)や御神楽での巫女の振鈴の所作にも同じ意味合いがあります。
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